〜お彼岸〜


あるとき、森に大風が吹き、木と木が触れ合って、アットいう間に火事になってしまいました。動物達は村の広場に集まり、大空の鳥たちに「どちらに逃げたたらいいの」とたずねました。すると、鳥は西を指しました。一斉に西に向かって走りましたが、そこは誰も行ったことのない所でした。突然、先頭のピューマがブレーキを掛けました。次から次に止まっていきます。そこは大きながけだったのです。

がけは広く深く、渡るのは簡単ではありません。いつも威張っているライオンが大声を出して飛んでみましたが、とどきません。強靭な鼻を持つ象も、身体を支えられません。

火はどんどん迫ってきます。みんな困っていると、森の奥でひっそり暮らしている大白鹿が現れ、渡りやすい場所を見つけると大きく身体を開いて橋になりました。「サァ、私の上を渡っていきなさい」。ビックリしながらに、ねずみが渡り、次はうさぎ、狐、ライオン、そして象まで渡りました。

みんな渡ったと思ったとき、後ろから声が聞こえました。道に迷ったうさぎがやけどをしながらよろよろ来ます。大鹿は疲れきっていましたが、最後の力を振り絞って渡すと、安心したように谷底に落ちていってしまいました。

お彼岸ですね。彼岸は彼の岸と書くのですね。

(哲地蔵)

2007.9.17発行 KID'S倶楽部 Vol.160