二世帯同居を考える~親の立場から~


 高齢社会を反映して住宅メーカーは盛んに二世帯住宅の宣伝をしている。いざという時に助けてくれる身内が同じ屋根の下に住むということは、確かに心強い。また、住居費の節約や育児補助など子ども側から見ても、親との同居はメリットが多い。しかし話はそう単純ではないことはご承知の通り。今回はまず〝親側の意見〟を聞いてみた。

 「私が姑でさんざん苦労したから、息子夫婦には同じ苦労をさせたくない。また自分自身、人に気を使う生活はもう十分ですから」というAさん(70歳・自営業)は、この春、百一歳の姑を見送ったばかり。東京に住む息子が呼んでくれてはいるが、「近くにマンションでも借りて、というのがミソ。同居するとどうなるか分かってるんでしょうね」とAさんは笑う。
 どうなるかの結果が出たBさん(84歳・女性)は、三年間の同居生活を「一生の不覚」とふりかえる。目が少し不自由になったことをきっかけに同居したのだが、息子の家は嫁の城。おまけに嫁の実母が息子の家から逃げ出してきていたから、Bさんは完全に〝お客様〟あつかい。母娘で楽しそうに台所に立つ姿を淋しくながめていたそうだ。
Bさんは現在、ケアサービス付のマンションで快適にシングルライフを送っている。
 また同居のCさんのように「息子に嫁が来た途端に主人の愛情が嫁に移り、美味しい物はすべて嫁、送り迎えもホイホイしてやり、私にはタクシーで帰って来いというんです」と嘆く人も。おじいさんにしてみれば「嫁を大切にして何が悪い」というところなのだろうが、Cさんの心中は複雑である。
 「自分も三世代、四世代同居で育った人は、それが当たり前と慣れているかも。子育てにはよい環境ですよね。人の生き死にを生活の中で体験できるわけですから。でも途中から同居は互いに辛い。たまに会いうだけだったお嫁さんに下着の世話までねぇ…。短期間ならいいですが、長期間となると双方にしこりができるんじゃない? 住宅事情もありますしね。それに今は共稼ぎが多いから、いざという時でも世話を頼むのはどうかしら」というDさん(72歳・主婦)は「自分で出来る間は自立して生き、出来なくなったら施設に入るのがベスト」と腹をきめているそうだ。
 厚生白書をみると、多産多死時代の人々は親を同居扶養する長男を実家に残し、職を求めて都市に流入して核家族を形成したから、大家族の実数に大きな変化はなかった。しかし1983年以降は減少。かわって65才以上で単身か夫婦のみの世帯が18%から47%と増加している。また中高年の子への依存意識も、大幅な低下傾向にあるという。
 さて、あなたは如何ですか?

2007.8.25発行 み・まも〜る9月号 Vol.4