エロサイト


携帯電話をいじくっていたら、どこかのサイトに行き着いたらしく、胸をあらわにした女性の写真が出てきた。(オオォォ…)と驚いたA男は、友達にも見せてやろうと、その写真を自分のデータボックスに取り込んだ。

「これ見てん」と見せると、どの友達も一様に「ワォ!」というリアクション。その場の〝ノリ〟で、「おれも、おれも」ということになり、そのデータはみんなの携帯に納まった。そのあとも更にクラスの垣根を飛び越えて、伝播の波が広がったようだった。

その写真をしげしげと眺めているところを、隣のクラスの男子が母親に見つかった。母親が問い詰めると、「友達から買った…」と告白。ヌードを見ていることよりも、そうしたものを売買していることに驚いた母親は、学校に行った。先生の調査は学年中の男子全般に及び、芋づる式にA男のところまできた。

調査の結果、「買った」とはいうものの、実は缶ジュースを飲ませてもらったに過ぎなかったのだが、先生としては「ヌード写真の売買」よりも、「ヌード写真の回覧」のほうに衝撃を受けたらしく、A男のクラスでは緊急懇談会が開かれることになった。不潔、いやらしい、あの子達があんなことするなんて等の言葉を乱発する先生に母親たちは戸惑った。先生は自分たちと同じ中年女性だが、何しろ独身だから、という思いが母親たちの胸にはあった。「先生、中学生ともなると興味があるのは当たり前で、だからといって今回のことを軽く考えているわけではないですが、ちょっと子どもたちを非難しすぎでは…」との意見が出た。母親たちは、日ごとに「男」になっていく息子を見ているから腹がすわっているのだ。

「あの程度の写真で大騒ぎするなら、コンビニに並んでいる本の表紙で、先生ひっくりかえりますよ。それよりもむしろ、携帯にしろインターネットにしろ、悪質なサイトに接続できる社会に対してどう対処するかを討論しましょうよ」となり、先生対母親の争いには至らなかった。しかし子どもたちには、エロサイトに接続したら「えらいことになる」ことが身にしみたようだった。
(J)

2007.8.20発行 KID'S倶楽部 Vol.159