「介護の現場は人生の縮図。地域が少しお世話してくれればどんなに安心か」



たんぽぽデイサービス城北サービス推進課
横井いづみ54歳

 横井さんは要介護者のデイサービス専門施設で働いている。ケアマネージャー事務所に施設利用をお願いする他、通所者とケアマネさんと家族とのパイプ役が主な仕事。
施設には毎日五十人ほどが通ってきている。その約30%が一人暮らし。通所当初は「淋しい死にたい」など悲しい心の訴えが続く。横井さんは「私も一人暮らし。みんな幸せそうに見えるけど、よく聞くとそれぞれが辛さや淋しさを抱えてる。皆同じ。ご家族と一緒の人でもお部屋の中で淋しい思いをしてる人もいるよ」と時にはセラピストのようにメンタルケアもする。
ところが、そんな人も一ヶ月ほど経つと見違えるほど元気に。「岩窟王のような人がみるみる人間性を取り戻していく。だからこの仕事がやめられない」と横井さん。性格的に人と交われない人が敵愾心剥き出しの人を自発的にお世話しだし、やがて皆と同じテーブルに着く。「点が線につながり、やがて面になっていくんです。人間性とは人と関わり合って人に心配りする事なのかも知れません」。
「中日新聞が安否確認してくれる事はチラシで知りました」と横井さん。「デイサービス通所者はお迎えに行くから分かりますが、そうでないと新聞と宅配のお弁当だけが安否確認の手立て。一人のお年寄りを数人でお世話するのが介護の基本。家族だけではとても無理で、施設のスタッフだけでも限界がある。でも地域に関わってもらった途端、可能性が広がる。この施設でも近所の人が職種や特技を生かして各種ボランティアをしていてくれます。仕事や住宅事情、家族構成などやむにやまれぬ事情で面倒が看られなくても、子どもはみんな親を心配しています。ESSのように地域が少しお世話して下さると、どんなに安心か」と横井さんは地域ぐるみの介護を説く。
 「死ぬまで人のお世話をしていきたい」という横井さんにとって、要介護者の心に灯をともす仕事が天職なのだろう。

2007.7.25発行 み・まも〜る8月号 Vol.3