ああ、「がんばる」違い


お昼寝時、保育士が顔色を変えて駆け込んでくる。「○○ちゃん、朝からおかしいと思っていたら熱があります」

もともと幼児は体温の高い子が多く、熱があっても平気で動き回る子も珍しくない。が、それで安心してはいけない。確実に体力は消耗し、ひきつけを起したりすることもある。健康のバロメーターとして登園前の検温を義務つけている園も多いはず。

家庭から届けられる毎朝の連絡帳を開く。検温の記録はないが、特別変わったことも書いてない。
親の勤務状態を参考にしながら、それでも連絡を取ってみる。

「えっ……」

保育士が絶句したまま。

「はい、お願いします」

「……どうしたの?」

「家にいらっしゃいました。今日はお仕事を休まれたようです」

保育園は原則として保育に欠ける子を預かる。つまり、誰も見てくれない子どもである。しかし、仕事が休みだからといって、保育園を休ませることはない。親にもいろいろ用事はあるし、リフレッシュも必要である。また、子どもにとっても友達や継続する保育は成長に欠かせない。

保育士が驚いたのは、

「ああ、やっぱり出てしまいましたか」

と、子どもの状態はご存知だったこと。それでも、三十分ほどで迎えいただけた。

「朝ね、○○ちゅん、がんばってねッといったら、『うん』といってくれたんですよ」。

保育士はしばらく声が出なかった。

(哲地蔵)

2007.7.17発行 KID'S倶楽部 Vol.158