心と心を縫い合わせる針のような人に…


原2丁目 加納美代子さん原2丁目 加納美代子さん

 「手先を使うとボケない」と言われる。半信半疑だったけど、「なるほど」と納得させてくれたのが、今回紹介する原二丁目の加納美代子さんだ。
 「子どものころから手芸は好きでしたよ。着せ替え人形の服や、ビーズなんかも作ったりしてて」。本格的に手芸を始めたのは、子どもも独立した五十路前。そして、手芸歴は何と三十余年。そう、加納さんの齢(よわい)は八十。若いのだ!
 今、夢中になっているのは”つるしびな”。「四、五年前、展示してあるものを見て『これなら私にも作れる』と。見ただけで、大体作り方は分かるけれど、分からないものは、商品を買って来て分解して型を取るの。でもね、三センチくらいの人形が、千二百円もするのよ」
 そう、加納さんが作る人形も、一体三センチほどのかわいらしいもの。これを、一メートルから一メートル三十センチくらいのひもに、何個もくくりつける。このひもを何本も輪からぶらさげて完成。段飾りならぬ、つるし飾り。これなら場所も取らない。
 材料にするのは、古布やマツボックリやドングリなど。拾ってきたものや廃材が多いから、費用はかからない。作るのは、ひな人形だけではない。やはり古布を使ってエトの人形も作る。
 「昨年の犬は、三百組作りました。プレゼントすることが多く、催促されることも。だから今から、もう来年のエト、ネズミを
作り始めていますよ」
 手芸の楽しみは、作る楽しみと、プレゼントする楽しみに尽きる。加納さんも作品は、病院や行きつけのお店にもプレゼントする。
「店先においてたら、盗られちゃったことも」という声は、とてもうれしそうだ。
 「自分が喜んで、人さまが喜んでくれる。こんなにうれしいことはない」と話し「心と心を縫い合わせる針のような人になりたい」とも。言葉が、宝石よりも眩しく輝いた。

2007.3.13発行 紙ひこうき Vol.309