だらだら~ 


 A子住む地域は私学天国。高偏差値の学校や偏差値は低くとも伝統のある学校等々バラエティーに富み、皆がいろんな条件で選んでいる。
 A子の家では、これまでこの子は男の子と遊んだことがない、じゃあ女子校が良いだろうという安易な理由で母親がA子の私学受験を決めた。母親自身は共学出身なので、女子校独特の雰囲気は知らない。受験塾では成績が芳しくない女子には二科受験の学校を勧める。それらの学校は全入の学校も少なくない。A子は二科受験ですんなり私立中学に入学した。
 自分がやりたいことをやることが差し障りがある場合もあるなんて考えてみたこともないA子は、友達に誘われても「今、本読んでるから」等、自分の都合を言って断っていた。するとある日、「その性格、直したほうがいいよ」と級友が忠告ではなく、明らかな攻撃として言い放った。しかしA子は「はあ?」という程度にしか受け取らなかった。その内に多分「あの子、嫌な感じ」とでもなttのだろう、だんだん疎外されていき、気が付けば孤立していた。
 程なくお定まりの「頭が痛い」「お腹が痛い」が始まって休みがちとなり、ついには不登校になった。誰かにいじめられたとか、組織的に仲間はずれにされているわけではないので、親も外部に働きかけるわけにもいかず、ひたすら本人に働きかけた。しかし「うるさい」「うぜー」「クソババア」という今時の中学生の言葉の応酬を受け、母親はめげた。
 ふとうこうとなったA子は十時過ぎに起きて一日中ひたすらダラダラするばかり。気まぐれに昼過ぎからフリースクールに通う日もあるが、それでも夕方には家に戻ってダラダラ。孤立し、人から一人ぼっちの世界でひたすら深くものを考えてるこのように見えるが、実はただ怠けたいだけなのではないかと母親は案じた。私学は退学して三年からは公立中学に籍を移したが、出席は一日もない。
 そんなある日、母親はチャレンジスクールの情報を得た。家でダラダラしていた子が急にきちんとできるわけがないことも考慮し、授業時間も選択できるし、単位制だから授業内容も選択できる。母親はA子に打診した。「それなら私でも続けられるかも・・・」とA子。母親は少しずつ動き出した。

KID'S 倶楽部 H19 Vol.152