キレるお母さん


3DKに両親、自分、弟の四人家族。
これまで何の不足も感じたことはなかったが、中学生になった途端に嫌になった。

互いの子ども部屋はふすまで仕切られており、小学校五年の弟とはそれなりに仲良くやってきたつもりだ。
ところが最近だんだん生意気になってきて、A子が音楽を聴きながら本を読んでいると「うるさい!」と言ってくる。自分だってゲームの音をボリュームいっぱいにしているくせに。
でもそこは姉、怒らずに「パソコンの部屋でやってきてくれない?」と言ったのだが、「やだ」。パソコンの部屋とは両親の部屋のことだ。文句が次第にくどくなってきたので、互いが段々エスカレートして罵りあいになってしまった。

「何なのっ、その言葉は!」と母親がやって来た。弟にではなくA子だけに言ってくるのだ。
「だって、B雄が変なことばかり言ってくるんだもん」と最初は普通の言い訳をしていたのだが、弟には何も言わない母親の態度が頭にきて、「お母さんはいつも私ばかり頭から押さえつけて、私の意見なんか全然聞こうとしてくれないじゃん」と必死で訴えたところ、母親の様子が一変した。いきなりA子を引きずり倒し、機関銃のようにA子を罵倒しながら蹴りまくってきたのだ。

この前お母さんがキレた時はお父さんが家にいたから「みっともない、近所に聞こえるぞ」と言ってくれた。
「私だって子供のこと思って言ってるんだもん」と母親。
「思ってないとは言わんが、言葉つきってもんがあるだろう。男のオレだってそんな乱暴な言葉使わんぞ」と父親。
その時はそれで収まったのだが、母親は決して反省したわけじゃない。父親は食事の作法に厳しいのだが、父親がいない時は、弟がひじをついて食べようと、もったいない食べ方をしてようと何も言わない。それどころか自分もぐちゃぐちゃなのだ。

さんざん罵って、やるだけやったら気が済んだのか、母親は少し冷静になった。そして「もう、今度逆らったら携帯取り上げるからね」とにらみつけた。
携帯のことはA子の弱点だ。取り上げられたらどうしようもない。

「はい、ごめんなさい」と謝りながら、どうにも納得のいかないA子だった。

KID'S倶楽部 H.18.7号