女子トイレ抗争


中学校の女子トイレは、今も昔も友達グループの拠点となる事が多い。基本的に「事なかれ主義」であるK子も、A子のひきいるグループに加わった。学校生活を平穏に送るためには、どこかのグループに入っていないと「いじめ」のターゲットにされる恐れがあるのだ。

各グループは対立している事が多い。例えばA子グループの人はB子グループの人とは仲良くしてはいけない、遊んではいけない、ひどい時は口をきいてはいけない、と言う暗黙のルールがある。そのルールを破れば、たちまちバッシングを浴びてしまう事になる。そんな面倒くさい抗争を『女子トイレ抗争』とK子は呼んでいる。

ある休日、K子がお父さんと部屋でテレビを見ていた時にK子の携帯電話が鳴った。A子グループの子からのメールが届いたのだった。メールの内容は「(A子グループの)F子はB子グループの人と遊んでいたから、シカトするように。みんなにメールして知らせて」という業務連絡のようなメール。それをK子はチラリと見ると「アホくさ…」と携帯を放り投げた。

それを見たお父さんは「友達じゃないの? 返事うたなくていいの?」と言ってきた。K子は女子トイレ抗争のメールだから放っておけばいいと言うと、「見せて見せて」とお父さんが言ってきた。K子は「だめーっ! お父さんウザイ!」と断っていたが、あんまりしつこいので見せてあげた。「これが女子トイレ抗争かぁ、ふむふむ」と嬉しそうなお父さん。「返事をうとう」と言って携帯をいじり始めたので「何やってるの!」とK子は携帯を取りあげた。

しばらくすると「おまえもF子ちゃんをシカトするのか?」とお父さんが聞いてきた。K子は「F子ちゃんってクラス違うからよく知らないけど、話しかけられれば普通に話しすると思うよ」と答えた。お父さんは「そうしたら、今度はおまえがA子グループから追い出されちゃうんじゃないか?」と言ってきた。K子は「大丈夫。F子ちゃんと話したのがバレても、だいたい2週間くらいすればホトボリがさめると思うから。うまくやれるよ」とこたえた。

「中学校も色々と大変なんだなぁ。頑張れよ」と言ったお父さんは、台所にいるお母さんの所に行って「おい、K子はすごいぞ!」と嬉しそうに娘自慢を始めた。「すぐご飯できるから、テレビ見てまってて!」と台所から追い出されたお父さんは「K子、すごいなぁ。頑張れよ」と再び意味不明な激励をとばしてソワソワしていた。

KID'S 倶楽部 Vol.194 中坊白書