ゲーム大会


最近のテレビゲームは、思っている以上に進化している。たくさんの人が一緒にプレイできて、みんなで協力してクリアしていくゲームもあって、家族みんなで楽しめる。テレビゲームの世界は、とっくに子どもだけの遊びの世界ではなくなっている。

その日、4年生のY君の家では友だちが集まってゲーム大会をしていた。
Y君は普段、このゲームを家族でやっていたのだが、Y君は上手になりすぎてしまって物足りなさを感じていた。お父さんは単純にヘタクソで、一年生の弟はズルをする。お母さんなんかは論外で、ゲームを途中で放棄してしまったりする。そこで友だちと集まってやることにしたのだ。

家に帰ると、誰よりも楽しみにしていた弟が待っていた。
Y君が「今日は友だちとゲームするんだからね。おまえは見てるだけだよ」と弟に言うと「わかった」と弟は言った。
友だちが集まってゲームを開始。弟は5分もしないうちに、自分もやりたいとグズりだす。Y君は「今日は見てるだけって言ったじゃん」と弟を叱りつける。泣きじゃくる弟を見たお母さんは「意地悪言わないで、まぜてあげなさい」とY君を叱った。

このゲームは、みんなで協力しないと先に進めないようにできている。バカバカしいと思う人もいるかもしれないが、子どもたちが友情や信頼を深める要素がしっかりと盛り込まれているのである。

ところが、弟が参加した時点で台無しになった。
ズルはするは妨害はするわ、喜んでいるのは弟だけだ。友だちの冷ややかな視線がY君に向けられる。Y君は「今度みんなの邪魔したら、混ぜてあげないからね!」と厳しく言うと、弟は「わかった。もう絶対に邪魔しない」と半泣きで答えた。

ゲームが再開すると、案の定、弟はズルや妨害行為を繰り返して大喜び。こんな事が数回繰り返されると、Y君は弟をたたいて叱った。弟は大泣きしてお母さんのもとへ告げ口だ。そうなると、友だち達も居心地が悪そうになって解散してしまった。

「何も悪い事してないのに」と大泣きで訴える弟と、一生懸命事情を説明するY君。そんなとき、お母さんは必ず「お兄ちゃんなんだから、ガマンしなさい」と言って終わらせる。

叱りやすい方を叱っているだけだと言うことに、弟は気づいているだろうか…と拳を握りしめるY君であった。

KID'S 倶楽部 Vol.189 小学百景