塾選び


中学入学以来『勉強だけ』ならトップクラスだったA子は、塾や家庭教師の必要など何も感じていなかったが、3年になるとさすがに親が焦りだして受験塾に入った。

テストの結果が即、成績に結びつかない事がA子の弱点だった。内申点がどうにも悪いのだ。
先生に嫌われてるんだとか、態度が悪く見られるのだとか愚痴を言ってみたところで始まらないことはA子にも分かっていた。数字は数字なのだ。しかし受験塾の先生はA子のテストの結果があまりにも良いからなのだろうが、進路相談のたびに「実力があるんだから大丈夫」という言葉を繰り返していた。

A子は塾の先生の言葉を真に受けて「ああ、このままでいいんだ」と思っている節があった。 
母親は(いくら実力があろうと内申点が悪いという現実はどうするんだろう、内申がこれだけなら当日点が満点でも危ないとか、そういう資料があるはず。それを具体的に言ってくれたほうがいいのに…)と、内心では思っていた。
また、大手の塾なら成績別にクラスも分かれているというが、A子の通う塾はみんなごちゃ混ぜで授業を受けているというのも、母親には不満だった。

冬休みとなりA子は『完全個別指導』がうたい文句の別の塾の冬季講座を受講した。そこの塾長は「この内申点じゃ無理無理、受けるだけ無駄」と、あっけらかんといってくれた。A子も母親も、その言葉で宙に浮いたような気持ちから開放された。夢や希望を持たせてくれるつもりだったのだろうが、数字という現実を直視しない

あの塾は、あんまりA子にはよくなかったな、と母娘は受験の直前に気がついたのだった。

KID'S倶楽部 Vol.176:中坊白書