お金の問題と、お金じゃない問題


各老人会では、地域のお一人暮らしの高齢者の家を「友愛訪問」している。
「同じ世代だから話しやすいのでしょうね、何回も訪問しているうちに愚痴なんかもこぼされます。気になるのは、その愚痴が同じ内容であることなんです」と、メンバーのお一人。

現在名古屋市では高齢者には地下鉄・市バスおよび医療で優遇措置がなされている。
「でもね、団地からバス停まで距離があるんです。しかも病院までの路線は大回りになっている。団地から直接病院まで歩いて行った方が早いくらい。でもその10分なり15分なりが高齢者や病人には辛いんですよ。で、タクシーを使わざるを得ないでしょ? このお金が馬鹿にならないんですよ」。

後期高齢者ではあるけれど要介護がつくほどではない。しかし年金でつましく暮らしている人が足を引きずりながら買い物や病院などに出かける場面に遭遇すると「胸が痛みましてね、市なり区なりが何か手を差し伸べることができないかと思うんですよ」。要介護がついた人でも、お金の問題で満足できるまでのサービスは頼めないのが現状だと言う。

「ここまではお金の問題ね。でも子どもも身よりも無い人には、お金の問題じゃない問題もあるんですよ。ほんとに、ちょっと話をする相手もない人が多いの。昔からずっと住んでいれば友達もできるかもしれないが、年とってから転居してきて新しい人間関係を作るのは難しいですよね。だから友愛訪問している自分たちみたいなのが唯一の話し相手だったりもする。
訪問っていっても『こんにちは、元気でいる?』って覗くだけですけど、頼りにして下さってるみたいで、先日も『こんな電話がかかってきたけど』って、振り込め詐欺の相談をなさったり。老人会の仲間しかないんですよ、話す相手が」。

お金の問題とお金じゃない問題。人間は常に何かを抱えながら生きていくものだとしみじみ感じた。

2009.2.25発行 み・まも〜る3月号 Vol.22