介護難民 ~行き場がない!~


「動けんようになったら施設に入るでいいわ」というのが最近の高齢者の心意気のようだ。しかし世の中は動く。状況も変わるし、高齢になれば「動けんようになる」の他に「分からんようになる」事態もあるのだ。
そんな場合にお世話になるのは、大きく分けて有料老人ホーム・特別養護老人ホーム(特養)・老人保健施設(老健)・療養型病院などである。
 療養型病院とは通称「老人病院」のことなのだが、厚労省は膨れ上がる老人医療費抑制のために介護型病床を2012年までに廃止する「再編」に着手。国は在宅介護を指導しているが、現在の家庭環境からは受け入れ態勢をすぐに完備することは難しい。ここに行き場がなくなった「介護難民」の増大を迎えることになったのだ。
 厚労省の狙いはいわゆる「社会的入院」の解消である。これは入院や医療の必要性が低いにもかかわらず家庭の事情や介護・福祉施設の不足等の理由(社会的事情)で長期間入院させるもので、老人医療費の無料化を契機に増えたといわれている。
家庭の事情は主に「介護人がいない」と「住宅の問題」なのだが、一昔前は「老人ホームに追いやった」では世間体が悪いので、入院という形をとる、という「家庭の事情」もあった。
 しかし今や老人ホームは「追いやられる場所」ではなく、高齢者自らが選んでいく場所になった感があるが、近年費用は増大の一途。上は温泉付きのリゾートホテル並みで、子に美田を残すよりは使っちゃえ、というところだろう。しかし安いところでも月額二十万円以上では入所できる人は限られてくる。
 となると庶民の頼みは自己負担が少なく終身でお世話してもらえる特養なのだが、こちらは三年待ち、四年待ちが当たり前の現状。本来、病状が安定し自宅に戻るまでの数ヶ月間を過ごす「老健」が、今では特養の待機場所みたいになっているのだ。
 今後ますます増える要介護高齢者。「介護難民」を出さないよう受け皿の整備が急がれるのだが、ここで民間パワーが動き出した。以降次回

2008.2.25発行 み・まも〜る3月号 Vol.10