「子どもさんに入会を働きかけてください!」


 Aじいちゃんは独居老人。ご飯を作るのが面倒臭いので酒ばかり飲んでいるともっぱらの噂だった。いつも酒の匂いを振りまきながら町内をふらついているので、まあ、それが無事な証拠といえば言えなくもなかった。
 ある日、新聞販売店に二人の民生委員さんがやってきて、AじいちゃんがESSに加入しているかどうかを訊ねてきた。聞けば、ここのところ姿を見てないというのだ。「高齢だし酔っぱらってるしで、いつ何が起こるか分らない。子どもさんの連絡先を教えといて頂戴と何回言っても教えてくれないの。ひょっとして新聞屋さんに登録してあるかと思って…」
 「うちもAさんのことは気になっていましたから、何度もESSの入会をお勧めしたんですが、ご理解頂けなくて。それに新聞もドアの中にストンと落としてないと、ご機嫌が悪い人だもんですから」と販売店。
 手がかりの宛てがなくなった民生委員さんは、警察に探してもらうよう手配した。すると行き倒れで入院していることが判明した。
 「結局さぁ、Aじいさんみたいな場合は子どもさんからESSに登録してもらわないかんわナ。『親を見張っとって頂戴』ってね。新聞屋さん、そうしたって」というのは、近所の人たちの後日談である。

2007.6.25発行 み・まも〜る7月号 Vol.2