解決は真摯に向かい合って-


引越しなどで転園してくる子に「申し送り書」が前園から送られてくることがあります。多くは事務的なことですが、中には評価に近い内容や性格などが送られてくることもあります。
受け入れ前に細かく読む担任もいますが、中には先入観を持たないとして「すぐには見ない」という職員もいます。
T君は四月に引っ越して来た子です。無口で、友達作りも苦手。クラスに溶け込んでいません。担任が意識して声をかけても反応はいまいち。心配になって「申し送り書」に目を通すと、驚くことに「活発でクラスのリーダー」と書いてあります。
環境の変化についていけないのか、体調が悪いのか、言葉がわからないか、あるいは…いじめか?担任は副担任とともにお母さんに会うことにしました。
子どもにとって成長期の一ヵ月は大人の数ヵ月です。まだ五月といっていては解決が遠のくだけです。お母さんも忙しいのか気づいていません。唯一「園の話はしませんね」と。
何かあるのです。こうした時、子どもから状況とか希望を訴えることは稀です。園では無口、家庭ではおしゃべりは合図なのです。今、担任は給食の時も、整列の時も、あそぶ時も、横に座ったりして一緒に過ごすようにしています。が、まだ判らないのです。
教育・保育ともにすぐ結果はなかなか出ません。ただ、指導者は真摯に向かい合っています。
(哲地蔵)

2007.5.21発行 KID'S倶楽部 Vol.156