私はお母さんの敵?


三歳の時に弟が生まれたので、A子はもの心ついた頃から”お姉ちゃん”である。そのせいか幼稚園時代から手のかからない子で、身支度をはじめ何でも自分でさっさとやっていた。そのお陰で母親は赤ちゃんの世話にかかりっきりになることができたし、A子もしっかりお姉ちゃん振りを発揮して弟の世話まで手伝っていた。
やがて弟も小学生。三年生ぐらいから男の子らしいヤンチャもやりだし、横暴にも横柄にもなってきた。対してA子は日に日に女の子に。しかし母親は弟のモードに合わせているので、自分も男言葉を使い出す始末。そのあたりから少しずつ母親との間に対立が生じるようになってきてしまった。
些細な姉弟ゲンカでも弟は大声をあげる。その声を聞きつけるや母親は「A子ッ、いい加減にしなさい!」と鬼の形相で飛んでくる。「ちがうの、B君がね」と事の次第を説明しだすと、母親は「言い訳をするんじゃない!」か「理屈をこねるんじゃない!」と言ってA子の口を封じ、問答無用でA子が悪いという結論を下す。
服を買いに行っても、A子の主張はことごとく却下。母好みの服じゃなければ「もう買ってあげない」となる。「じゃあパパに直接お願いする」と反撃にでたところ今度は逆切れ。「だって、お金出すのパパでしょ?」と、A子なりの思いを口にすると「あんたそうやってパパをたぶらかしてるんだわ」と泣き出してしまった。
確かにA子は、いまだに父親のお膝に座るほどのお父さん子だ。しかしその度に母親は「何なの中学生にもなってその甘え方は。どきなさい」とA子を追い払い、かわりに自分がペタリと父に寄りそって見せる。そうか、母の目には「たぶらかしている」と映っていたのか。ひょっとして私はお母さんの敵?A子の心に、悲しさと淋しさが静かに広がっていった。

2007.4.16発行 KID'S倶楽部 Vol.155