進級・入学シンドローム


 「せんせ〜い」と陽気でリーダーシップもあってみんなから信頼されているPTA役員のSさんが子どもと一緒に登園してくる。
この親子、そっくりの性格。簡単に言えば、子どもはおませ。ついつい乗せられ、無理を聞いたことは何度もあるが、恨んだことは無い。得な性格の親子である。
 「ちょっとご相談が」
 珍しい。いつも自分で決める人が相談なんて、と構えると、要領よく子どもを友人に預けて、
 「ねえ、先生、うちの子、最近変じゃないですか」
 聞いてみると、夜中に突然泣き出したり、大声を上げることがあるという。朝になればケロッとしていて、何も覚えていない。
 「いじめられていないかしら、熱は無いから、病気ではないでしょ?」
 挙句は、
 「わが子ながら気持ちが悪い」と。
 実は、こうした話は時々聞くのです。例えば、運動会とか、発表会の行事が近づいてきたとき、子どもも大人と同様いろいろ心配するのです。
 この時期は新年度の話題で一杯。年長組では「小学校は広い運動場、たくさんの友だち、楽しいよ」と先生は夢を語ります。
進級する子も「今度は何組?」といつも聞かれます。
 環境変化も負担に感ずる子もいるのです。Sさんの子どもはいつも陽気に見えていても、本当は少し心配していたのかも。
 この傾向、責任感の強い子にありそうですよ。
 春です。大人の夢に付き合う、子どもの心にもご配慮願いたいですね。
 (哲地蔵)

2007.3.19発行 KID'S倶楽部 Vol.154