生き物を大切にする/天白川の鯉


天白川には鳥のサギもいれば鵜も、大きな亀もいます。
天白区役所の北には何年も前に有志が放流した鯉が六十センチを越した大物となって群れをなしています。
この鯉はとても慣れていて「えさ」を投げてくれる人を知っているのか足音だけで集まってきます。パンくずに幾重にも重なる様は、初めは怖くても少しずつ親しみに変り、子ども達には楽しみな散歩コースとなっています。

その日、いつものように歩いているのに鯉が集まってきません。
「どうしたの?」と見るとサオを入れている人がいます。子どもたちは声を落としました。
鯉も近寄りませんが、それでも「えさ」を口にしてしまった鯉が出ました。
帰路、子どもから声が出ません。

幼児期の体験は貴重で、その時に一番大切なことは大人の一言です。
ボールけりがうれしくって、ただけっていたのに「うまいぞ」といわれて小学校で本格的にはじめたという話はよく聞きます。
親の激励は子どもに潜在的な自信を持たせます。
この潜在的な力を育てるのも幼児期の大切なテーマです。

園ではもうひとつ「心の力」も育てたいと思います。例えば「思いやり」。
それは「うさぎ、かめ、イヌ、カブト虫など」の生き物が示してくれます。
励まされて初めて触れた喜びも生涯のものとなります。愛情もここから育つと思います。
「何もここで釣らなくてもいいのに」
その日、保育士は子どもたちに掛ける言葉がどうしても見つかりませんでした。

KID'S倶楽部 H.18.7号