自分の部屋


「大事な物が捨てられる」「大事な物がしまいこまれる」「不用意にコンセントが抜かれる」。これは中学生が親に部屋を掃除されて困った事のランキングの上位だ。

H君は中学2年生。多分に漏れず、留守中に親が勝手に部屋掃除をするので迷惑している。「親が部屋掃除までしてくれるなんて、ありがたい事じゃないか」と言うのは大人の言い分で、H君にとっては迷惑極まりない。13年も生きていれば、誰にも知られたくないヒミツだって出てくるものなのだが、親は理解なんかしちゃくれない。と言うか、する気がないだろう。

ある日、母親の部屋掃除のせいで、友達から借りていたゲームソフトが紛失した。「学校から帰ったら返しに行くね」と約束したのに、帰ってみると部屋が掃除されていて、ゲームソフトの類の物が一切見当たらなくなっていた。母親は午後からは仕事に出ていて留守だ。激怒したH君は、家じゅうの引き出しをひっくり返してゲームソフトを探した。もう探すとこはないだろう、と言うくらい家の中はひっちゃかめっちゃか。全部捨てられてしまったのだろうか。

約束が守れずに「どうしよう」と半泣きになり始めたころ、洗濯機の横に見慣れぬ紙袋を発見した。中には、H君の部屋にあったゲームソフトがごっそりと入っていた。「助かった!」と、胸をなでおろして、返すソフトを手に取って愕然となった。ゲームソフトのケースが割れてしまっていたのだ。日が暮れ始めた頃、H君はソフトを返すはずだった友達に電話をした。ソフトのケースが割れた事を伝えると、友達は「もう絶対貸さない! 弁償してよ!」と激怒。H君は平謝りをするしかなかった。そんな噂は学校中をかけめぐり、H君にゲームソフトを貸してくれる友達は一人もいなくなってしまった。H君は学校での信用を、全く失ってしまったのだった。

親に文句を言っても「自分で部屋を片付けないから悪い」と言われる。正確には「H君の部屋の片づけ方では、母親が気に入らないから手をだした」のだろうが、母親の態度は「私は悪くない」の頑固一徹。
結局泣き寝入りする事になったH君。自分の部屋にカギをつけたら、父親に往復ビンタで怒鳴りつけられた。

KID'S 倶楽部 Vol.192 中坊白書