孫育ては慎重に


「二度と失敗しないために」と言って孫の送迎を引き受けているおばあちゃんがいる。
おばぁちゃんと言ってもまだ五十歳少々。元気です。
「失敗」と聞いて、送迎を引き受けて忘れたとか、若い嫁に「叱られた?」、などさまざま想像していました。

ある時、とても細やかに帰宅の身支度をさせている彼女(おばぁちゃん)をみかけました。それは微笑みが出るくらい優しく、それでも教えるところは丁寧に教えています。育児書のとおりです。やがて、私にまでしっかり挨拶させると手を握って意気揚々と門をでていくのです。

「しっかりしたおばぁちゃんだね」と保育士に声をかけると、保育士の顔が優れません。「『私の失敗はさせない』ってよくいわれますけど、失敗って育児なんです」と説明してくれた。

彼女のお嫁さんとは実子。「養子さんではないです」とよく強調されるが、婿さんご一家と同居。それはそれで結構。嫁姑問題もないはずなのに、「母娘の関係がおかしい」とのこと。

何でも、おばぁちゃんは高度成長期の子育てで、仕事と両立をはかって、理想的な健全家庭を成しているつもりでした。詳しいことは分りませんが、ある時、娘と子育て談義をしていたときに、「とても厳しかった」、「あの一言が負担だった」と言われて大混乱。理想的な母親像を追って育児書を読みあさるようになったのです。

結果的に、娘の保育方針が気に入らなく、挙句に「私の失敗はさせない」となったのです。
娘さんも仕事は止められず、子どもを取られた心境とのこと。

親子だからやがて和解、と思うのですが、客観的には「孫育ては慎重に」と申し上げたい。

KID'S倶楽部 Vol.187 幼年図鑑