幼年図鑑 迷子


とある家電屋さんで、テレビのコーナーにいた時の話。私は色々なテレビのカタログを手にの値段を見ならが悩んでいると、ズボンの裾をグイッっと引っ張られた。「何だ?」と思って足元を見ると、知らない小さな男の子がこっちを見上げていた。

目が合って「お、どうした?」と聞いた瞬間、男の子はつかんでいた私のズボンの裾を慌てて離し、今にも泣きそうな顔をして固まった。どうやら親と私を間違えたらしい。

周りをみても親らしき姿はどこにもない。「誰ときたの?」としゃがみ込んで声をかけると、クルリと後ろを向いて走って逃げ出した。
逃げだしたはいいが、数歩走ったところでペッターンと見事に転んだ。転んだ瞬間に「フギャーーッ」と大声で泣き出した。唖然としてみていると店員さんが遠目に確認をしにきて、私の姿をみるなりUターン。店員さんまで私をこの子の親と間違ったようだ。

仕方がないので、床に張り付いたまま泣きじゃくる子をヒョイと抱き上げ、「大丈夫、大丈夫。お母さんときたの?」と聞いてみる。子どもは触るなと言わんばかりに、さらに大泣きをはじめた。

困っていると、年配のおじさんが登場。「すいません、うちの孫です」とおじさんが子どもを抱き上げると、今度は「どうしてボクから目を離したんだ」と言いたげに大泣きして、おじさんをバシバシと叩いている。

祖父はパソコンコーナーで店員さんに色々話を聞いている最中に、子どもはテレビのアニメにつられてテレビコーナーに迷い込んだと言うことらしい。

「ほら、ごめんなさいして」と祖父が抱き上げた孫に、私に謝るようにいうと、憎々しげに私を見ると、さらに泣いて見せた。

KID'S倶楽部 Vol.186