中坊白書 社会科


C子は社会科の授業が大嫌いだ。

C子の社会科の先生は授業のチャイムが鳴るなりチョークを手にとって、黒板の端から端まで書き始める。生徒達は黒板に書かれた文字を、とにかくノートに書き移す。定期的にノートは提出するように言われて採点までされるので、みんな必死だ。

先生は黒板を埋め終えると、黙々とノートをとる生徒たちの後頭部に向かって何やら語り始める。ほぼ黒板に書いてある事を読んでいるだけだ。しかもその内容は、ほとんど教科書に書いてある事をかいつまんでいるだけだった。

先生はしばらくすると、「半分消しますよー」と黒板の半分を消し、消した部分にまた書き始める。生徒達は、またノートを必死に書き始める。そうこうしていると授業は終わり、授業の内容なんかまるで思い出せない。ただ漢字の書き取りのごとく、黒板をノートに写しただけ。

この先生の社会科の授業は評判が悪かった。男子生徒の多くは、黒板を書き写すだけで終わるので楽だと言う。ノートも授業中にとらずに、放課後に誰かのノートを見せてもらって、のんびり写している。

事実、ノートさえとっていれば先生は文句も何も言わない。その先生の授業について、生徒達の間では「生徒にノートとらせておけば、教室が静かで楽だからだよ」というのが定説になっていた。

C子は、そんな社会科の授業の話を母親にして、「これが将来役にたつ事とは思えない。学校に行く意味がわからない」と愚痴ってみた。母親は「じゃぁ社会科の勉強はTVでしなさい。大河ドラマ、面白いよ。○○君も出てるよ」とC子の好きなアイドルの名前を口にした。母親は通知表には興味があるが、日常の学校の勉強の話に興味は無いようだ。

C子は「うん。じゃぁ、そうする」と答えた。
C子は母親と大河ドラマの再放送を見ていると、母親はタバコを吹かしながら「考えるだけ損だよ」とC子を諭したが、C子はアイドルに夢中で何も聞こえていなかった。

KID'S倶楽部 Vol.186