幼年図鑑 ほとけの世界はここに


若いお母さんから手紙をいただいた。子どものころから知っている子で、高校生の時の親子の対立、大学生活、就職を経て結婚、いろいろありましたが、今は幸せに暮らしています。そして、子どもが生まれてその報告の手紙をくれたのです。

『子どもが生まれました。十週間です。すこし落ち着きましたが、よく泣き、ときどきわからないことを言います。それで、その声(?)に合わせて私が声を出すと返事(?)をしてくれるのです。

「あぐー」と言うと「あぐーーー」応えてくれます。余りかわいくてパパが帰ると親子三人で「あぐー」と音色を変えて話しています。とても楽しいので何度もしてしまいます。』

という内容です。母親が子どもの真似をして声掛けをしている。そこに父親が入って三人の世界を作る。浮かべて下さい。楽しい親子の世界が見えます。そこに損得はありませんね。親子の和む世界、これは仏の世界です。

この世界が永遠ならいいのですが、幼稚園、小学校、中学と成長につれこの世界が変っていきます。親離れから独立、成長していくのですが、その過程は親子とも平坦ではありません。

この女性もそうでした。親子の対立、不信…深刻でしたね。原因は…他人の推測ですからやめておきます。

きっかけは独立。親の願いから地元の会社に就職しましたが、会社の都合で転勤を余儀なくされました。就職の際、父親は地元にこだわっていたので「約束が違う」と雇用主にまで会おうとしたそうです。ところが、それで改めて娘は父親の愛情を感じたというのですから、親子は分りませんね。

ともかく、父親はぢぢ親になり、一家はますます仲良しです。
娘もきっと自分が幼児期の父親の声掛けを思い出しているのでしょうね。

KID'S倶楽部 Vol.185