中坊白書 : 学歴は必要


「ウチのお父さん、ハケンだから」「ウチはシングルマザーだから」何て会話は、校内で当たり前のように飛び交う時代である。

R子の父親は、古くから働いていた会社が倒産し、R子が中学に入学した年に派遣社員で働き始めた。それが今年に入って「派遣切り」にあった。母親はパートで働いていたので、夕方までは家にいない。昼間に父親がテレビの前でゴロゴロしている事も多く、R子は蹴飛ばして歩いていた。

そんな頃、R子は「友達と同じ塾に通いたい」と両親に相談した。その塾は超有名な進学塾で、「そんなお金無いから、今の安い塾で我慢しなさい」と断念させられた。R子は別に勉強したいわけでなく、友達と同じ塾に通いたいだけだったので、余計に悔しい思いをした。

そして、R子は3年生になった。当然、教室中が受験の話で賑わうようになってきた。R子の両親は「公立だったらドコでもいい」と言ったのを聞いて、R子は激怒した。R子の友達はみんな私立を志望していて、「頑張って同じ高校に入ろうね」と約束していたのだ。

「だったら、高校なんか行かない!」とR子は泣きじゃくると、「今時、せめて短大までは出ておかないと何もできないんだぞ」と父親はR子を説得し始めた。「だから、みんなと同じ高校に行かせてよ!」と訴えるも、「そんなお金はウチには無い」と返される。R子はわけがわからない。何一つ納得がいかない。

「大学出たって、お父さんみたいに会社が潰れちゃったら意味ないじゃん!」と言うと、父親は目をむくだけでグゥの音も出ない。ほらみろ、と気を良くしたR子は、「お母さんだって、大学出てすぐ結婚してるんだから、大学行った意味なんか無いじゃん!」と言ってやった。ところが、母親は父親とは違った。「高校くらい出ておかないとパートの仕事もないんだよ!」と怒鳴り返された。R子はひるんで引き下がってしまった。

翌日の朝、そんな出来事を学校で友達に話すと、「本当に思ってる事は、親に言っても損するだけだよ。」「どうしようも無いんだよ」とサラリと言われた。

その日の授業中、R子は「みんなも、色々大変なんだろうなぁ。」としみじみと考えながら、ペン回しの練習にはげんでいた。

KID'S倶楽部 Vol.184