オバチャン戦争


「もう駄目だ、ママ。もうついてけれんもん」とA子は学校から帰ってくるなりカバンを床に放り出した。
「だから塾へ行きなさいって言ってるでしょ」
「違うんだってェ。人間関係についてけれんのだわ。もう人間不信になっちゃうよ。女子全員がウソつき合戦してるみたいだもん…」

A子のクラスの女子は数人ずつのグループに分かれてつるんでいる。グループ対グループでけんかしたりするのならA子にも理解できるのだが、「私たちって親友よねッ!」と言い合っている者同士が、水面下でピリピリとした睨み合いをしているらしいのだ。

「もう親友なんて嘘ばっか。グループが決まってない子が時々いろんなグループをかき回しに来るのね。そんなの無視しとけばいいのに、それだけで一気にグループが崩壊するんだよ」
「どうやってかき回すの?」
「アホみたいだよ。グループの中の一人があんたの悪口言ってたよとか言ったり、誰が好きだとかグループの中だけの秘密を他の子にしゃべったとかさ。普通、そんなこと信用するか?」
「それでどうなっちゃうの?」
「シカト(無視)だわさァ。あからさまに『来んな』じゃないけど来んなオーラばんばん。すれ違いざまに『死ね!』とか言ったりね。ちょっと前までおトイレもお昼ご飯も一緒でベターとひっついていた同士なんだよ。そいでこうやって何か起こると、すぐにクラス中の女子が複雑にからんでくるんだわ。
今はさ、あからさまにハバにするとイジメになるといかんからすぐに先生が入ってくるじゃん?で、上辺だけ仲直りするの。こうなると誰に何をしゃべっても今度はターゲットがこっちになるかもしれんから、すっごい緊張。狂っとらん? 
でも私もそうだけど、だからって一人でいる勇気がないの。緊張しながら仲良しやるのって、たいへんなんだから」
「あのさぁ、あんたたちまだ中学生でしょう? ママから見ると、それって暇を持て余しているオバチャンみたいに思えるけど。面と向かうといい事ばっかり言って、その人がいないところでは悪口言う人いるもん」。

ああオバチャン戦争!

KID'S倶楽部 Vol.180:中坊白書