介護離職


2006年、要介護者の在宅サービスを大きく制限する「改正介護法」が実施されたことにより、同年10月から一年間の離職者が実に14万4800人にのぼった。内、男性は2万5600人である。

多くの働く女性が子育ての時に味わった苦労が、今、要介護者を抱える人々に押し寄せているのだ。確かに介護休業制度など法律面は徐々に介護者の味方になっている。しかしその法律を実行するのは企業だから、企業が協力をしない限り、それらの法律は有名無実のものとなる。
世間様の目も残酷だ。 

要するに(育児もだが)介護は主婦がする仕事とされてきたのがネックになっているのだ。育児休暇をとるパパは非常に少ない。それと同じだ。現厚生労働大臣の舛添要一氏が母を介護したと発表したときの世間の驚きっぷりったらなかった。

しかし只今現在、企業の第一線で働いている女性も多い。更に熟年離婚の増加、少子化で助けてくれる兄弟も少ないなどの現実があるので、親が倒れると何しろ自分しか面倒を見るものがないと大あわてで離職するのだと思う。

しかし介護が落ち着いてきてハッと気付くのは経済的な生活苦であり、社会から外れたという疎外感であり孤独である。中高年になって一旦退職した者を受け入れてくれる職場は少なく、それに追い打ちをかけているのが現在の不況だ。かつて仕事人間だった人ほど滅入ってくる。厚生労働省の平成18年の報告によると、在宅介護者の4人に1人が軽い鬱(うつ)で、65歳以上の老々介護に至っては、約3割が「死にたい」とまで言っているそうである。

タレントの清水由貴子さんが命をかけて見せてくれたではないか。安易に仕事は辞めてはならない。自治体サービスを細かくチェックすれば、何らかのお助け制度もある。1人で抱え込もうとする親(あるいはパートナー)孝行の気持ちは分かるが、人間、出来ることと出来ないことがあるので、「助けて!」と世間に向かって叫ぶことも忘れてはいけないのだ。介護の頑張り過ぎは共倒れの結果を招くことを肝に銘じたいものだ。

2009.5.25発行 み・まも~る6月号 Vol.25