介護する側、される側


介護保険の導入以降、様々な介護サービスを受けている人も多いと思う。

ケアプランを立てるケアマネさんも実際に支援をするヘルパーさんも、いわば「他人の家の中に入り込む仕事」だから相当なベテランさんでも大変なお仕事だ。両者とも「自立支援」が目的だから、介護を受ける側は何をどう困っているのか、どの部分を支援して欲しいのか表現することが大切だ。しかし新しい制度だからだろうか、本当に丸裸になって窮状を訴えることが苦手な人が多いようだ。

ある独居のおばあさんは、本当は買い物も困難で遠距離にいる娘さんに頼る毎日だ。それなのにケアマネさんの前では見栄を張って(娘さんの言葉)、散歩ついでに買い物をするとか、料理は得意なのでとか言うものだから、結局は満足のいくケアプランを立ててもらえなかったと娘さんはぼやいている。

気持ちは充分わかるが、粗相をした汚れ物を隠す人も多い。ヘルパーさんは「汚れ物は出して下さいね」と再三言うのだが、出してくれない。「そのために私が来てるんじゃないですか」と言っても、恥じらいやプライドがじゃまをするのだろう。

その反対なのが、通ってきてくれるヘルパーさんを召し使いだと勘違いする場合だ。掃除の仕方、お料理の味付けのひとつひとつに厳しい叱責をとばすのだ。しかし面白いことに、同じ人でもデイケアで施設に来ると、何の文句も言わずににこにこと「ありがとう」を繰り返すのだそうだ。やはり人間には「よそいきの顔」があるとみえる。家では「主(あるじ)」以外の何者にもなれないのだろう。

いずれにしても介護保険制度が出来てまだ日も浅い。他人にお世話してもらうことに慣れるには、もうすこし年月が必要なのかもしれない。

2009.4.25発行 み・まも~る5月号 Vol.24