人間に育てる


ゲームやテレビに夢中な時、人間の脳にはドーパミンが放出されます。
これは「快」の素なのですが、常に放出されていると日常の「お花がきれいね」等の優しい感動が持ちにくくなります。テレビやゲームに加えて生活自体もゆったりした時間が持ってもらえない子は、いわゆる「キレやすい子」になりがちです。反対にゆっくり付き合ってもらった子は自分を表現できるし、正しく生きていく事が出来ます。

「キレる」とは、脳の回路がいきなりバイバス経由で怒りの領域に入る状態です。
暴れたり怒ったりするのですが、これは実は自己防衛のためなのです。また、大人でも同じですが、普通の話のやりとりの最中に急に怒り出す人がいます。よくよく観察してみると、どうやら話しの内容がよく分かってないようなのです。「キレる」には、理解力も関与しているのです。「もういいっ!」とプッとする子などはその典型。
一呼吸おいたり、ちょっと立ち止まって考えることができませんし、「まぁいいわぁ」と許す事も出来ません。

例えば、知らずに誰かがぶつかった場合、すぐに「なんだ!」となる子がいますが、これはすべてを攻撃と捉えているのです。
もちろんこの攻撃も自己防衛で、この怒りの姿は人間の前、動物の姿なのです。人間は前頭葉=理性で怒りなどをコントロールするものなのなのですが、キレる時は脳の最も古い部分だけを使っている状態で、人間を人間たらしめている前頭葉が休止してしまっているのです。
豹変した時の目はけものの目にそっくりです。顔で察知できますから、園の子にはスイッチが入る前に「なにかあったの?」と声を掛けて一呼吸つかせます。嫌な思いを「キレる」のではなく、その子の言葉で表せるようにしてあげたいのですが。

なぜこんなにも自己防衛=攻撃をしなくてはならないのでしょうか。
多分、安心できる場所や人がいないのでしょう。子どもは敏感です。究極でいえば「いつ捨てられるか」という恐怖に怯えている子もいます。保育士がどんなに頑張っても母親には替われません。生きにくい世の中ですから親も自分の事でいっぱいいっぱいかもしれませんが、子どもはずっと我慢して「私はどうなるんだろう」とハラハラドキドキしています。

私たちの課題は、子どもたちが本来の脳の回路を通って、人間らしく「考える事」ができるようにすることです。

KID'S倶楽部 Vol.177:幼年図鑑