午前六時三十分


三月早々のある日、朝刊配達のスタッフから、Aさんのお宅のポストに前日の新聞が残っているという連絡が販売店に入った。ESSの発動である。

AさんはESS登録者なので早速電話を掛けてみた。朝六時三十分のことである。
長い長い呼び出し音。お出にならない。それを繰り返す事三回。販売店はその手で緊急連絡先である娘さんのお宅に電話をして事の次第を説明した。「確認してきます」と娘さんも緊張した声でそう告げて電話を切った。販売店中が不安に包まれた。

翌日、娘さんから電話が入った。AさんはESS発動の前日に死亡していた事が推定されたとのことだった。
生きていてくださいというスタッフの祈りは通じなかったが、娘さんは今晩がお通夜になることを告げると共に「すぐに発見して頂きありがとうございました」とお礼を言ってくださった。
少しだけ救われたような気がした。

2009.3.25発行 み・まも〜る4月号 Vol.23