受け継ぐもの~仏壇や墓はどうなる?~


 その家の伝統・しきたり・家風などの継承は、歌舞伎役者か何かの宗家、あるいは旧華族あたりでのみ可能で、我々庶民レベルでは、提示しただけで次世代からプンとそっぽを向かれてしまう場合が多い。
じゃあ、先祖伝来の墓はどうなる、私が死んだら誰が仏壇を守っていってくれるのか。私の墓に花を手向けてくれる人はいるのか。密かではあるが、そうした心配で胸を曇らせている人も多い。何人かにお話をうかがってみた。

Aさん(70歳女性)の家は江戸時代から続く素封家。広大な敷地には蔵や離れが点在。夫は早世。姑を見送った時点で自分も高齢だからと息子たちが住む東京へ行こうと計画していたが、長男の嫁から電話が入った。「別にパパ一人のお母さんてわけでもないので、うちだけがお世話するのも変な話です。どの兄弟とも同距離の地点で暮らして下さい」。東京へ行くのはやめた。「もう何もかも私で終わり。財産もババ付なら御免こうむるってところでしょうね。菩提寺に永代供養はお願いしました」とAさん。息子は多分、嫁とのいざこざを避けて沈黙しているのだろう。 
一方Bさん(60歳女性)のように「舅姑は激動の人生で継承の余裕はなかったから、私は本や人から先祖供養等を学んだ。私自身両親と幼くして死に別れているので、生活様式は全てオリジナル。その中で引き継いでもらいたいものは嫁にお願いしている。墓守は息子が必ずやってくれると自信を持っている。嫁も息子に従うタイプだから安心」という人もいる。
この差は何だろう。多分お嫁さんの価値観の差だ。「家風は嫁が作る」とは古人の言だが、今の時代、お嫁さんに限らず多くの者が独自のスタイルを確立する気もなければ、有形無形の「先人の遺産」を尊重する気もないのかもしれない。
 「僕たちには子どもがいない。もう永代供養つきのお墓を買いました。残った方の弔いは甥に頼んであります」(78歳男性)
 いっそ、こんな風にあっさりと考えたほうが良いかも。

2008.1.25発行 み・まも〜る2月号 Vol.9