福朗


 若い頃、伊勢に詣でた。今で言う「おかげ横丁」のあたりを散策していると、きれいな老女が「ご覧になりますか?」と大きな日本家屋の中に招じ入れてくれた。赤福本店だった。その少し前に十朱幸代が赤福女将の一代記をテレビでやっていたので、「ひょっとして十朱さんの…」と言ったら「お恥ずかしゅうございます」といいながら、かつて小豆を炊いた竃や大釜を見せてくれた。あの頃はたらいのぐるりに座ったおばちゃんたちが、器用に赤福を作っていたのに。赤福のおばあちゃん、ご存命かしら

2007.10.25発行 み・まも〜る11月号 Vol.6