二世帯同居を考える~子どもの立場から~


 「跡継ぎ夫婦は親と同居して、伝統等を引き継ぐべし」という考えは、都市部では少なくなった。その理由としては、受け継ぐべき伝統が希薄になってきたこと、商家の場合は商売そのものが立ち行かなくなったこと、住宅問題などが挙げられる。また戦後の民法の改正により、財産は基本的に兄弟に同等に分配されるようになったので、たとえ農村部であっても「親と財産がワンセット」というかつての〝当たり前〟が通用しなくなったことも大きい。
 しかし親が高齢になり介護の必要が出てくる場合、独立二世帯では経済的にやっていかれない場合、あるいは若夫婦に子どもが生まれた場合などに、同居話はぐっと現実的になる。
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 「今はまだ両親とも健康なのですが、弱ったら面倒みようと思っています。でも田舎には仕事がありません。かといって先祖代々の土地から出て来いとは言えない。妻が田舎で両親の世話をし、僕が単身で都会で働き、仕送りをする形になると思います」(28歳男性)。
 この男性の場合、お世話をすべき両親は妻の親。だから話がスムースにいくのだろう。これが逆で、「君だけ田舎へ行って僕の両親の介護をしてくれ」と妻に頼める夫がいるかどうか、「はい」と承諾する嫁がいるかどうかは、はなはだ疑問だ。
 「同居の頃、表面上はうまくやっていたが、食べ物のことなどで妻も苦労しましたし、両親も気兼ねしていた。何かことが起きた場合、僕はどっちにつくわけにもいかず困っていました。
子どもが増えたので今はスープの冷めない距離で別居。でも弱ったらまた同居せざるを得ないでしょうね」(40歳男性)。
 二世帯同居の場合、夫が一番困るのが〝妻と親との板挟み〟状態。それが辛くて外に居場所を求め、離婚したケースも多いと聞く。同居組のお嫁さんのほとんどが「夫が味方してくれるので我慢できる」と最後に付け加えるので、これが円満同居のキーポイントなのだろう。
 逆に夫が妻の親を看る場合、
「妻と義母はお友達母娘。仲が良いので正直言って僕の居場所がありません」(29歳男性)という微笑ましいケースもあれば、「実の母娘で互いに遠慮がないのか、壮絶な戦いが繰り広げられている」(53歳男性)と頭を抱えるケースもあるようだ。
いわゆる〝嫁姑〟が問題になるのは、双方が専業主婦の場合に多い。台所を中心に家庭内での覇権争いが繰り広げられる。子育ての方法論も争いのタネ。「夫の仕事の関係でまるで母子家庭状態なのですが、同居なので心細くないし助かることがいっぱい。両親が近所付き合いのいい人なので、近所は私のことも大切にしてくれる。茶の間で寝転がれないことぐらいかな、窮屈なのは」(31歳女性)と語る女性の家は姑が地域ボランティアで、本人もパート勤め。二人でケラケラと笑う姿はまことにほほえましい。
人間、いつか弱るときがくる。さあ、あなたはどうする。

2007.9.25発行 み・まも〜る10月号 Vol.5