ケイコちゃんのマネーゲーム


7月29日午後8時、日本全国に激震が走った。

参院選の開票がスタートし、NHKを始め民放各社も独自の出口調査を一気に出した。その数字が正しければ民主党の圧勝。そして事前の予想通りとはいえ、30日を待たずして選挙の大勢は決まった。

27日の日経平均終値は17283円。ケイコはもう一度、考えをまとめようと思った。明日、日経平均はいくら下げるだろう。それと、どの業種が一番大きく影響を受けるだろうかと。IT関連や電気関連はいずれにしても今はダメ。6月に売った伊藤忠や他の商事会社もいいが、以前から買いたかった建機のコマツが大きく下げたら買いにいこうと決心。ケイコにとって選択肢はそう多くはない。「よしっ、コマツで明日の朝を待とう」と床に付いたケイコだった。

翌朝の東京市場、寄り付きは下げて始まったが、ショッキングなものではない。値をどんどん戻し日経平均は、わずか6円ながら上げて終ってしまった。ケイコのコマツ買いはノーチャンス。「やっぱり日本企業の業績はいいんだな」と改めて感じたケイコだった。

しかし、チャンスは意外なところからきた。今度は二ユーヨークを発信源とする激震が、世界を駆け抜けたのだ。低所得や過去に破産経験を持つなど信用力の低い人向けの住宅ローンである「サブプライムローン」の問題悪化(大量の焦げ付きによる金融機関の破綻など)が原因だ。東京市場は世間がお盆休みの15日に 369円、16日は327円、17日にはなんと874円下げ、3日間で1570円も下げてしまった。コマツもこの3日間で615円下げ、2935円と 3000円を割った。

しかし、この意外な展開にケイコは動くことができなかった。新聞を読んでいる限り、「サブプライムローンの影響は順次プライムローンにまで波及していくのでは」などという論調もあり、下げ止まる確信が持てなかったのだ。

しかし、アメリカ政府も無視するわけにいかず、FRBが公定歩合を0・5%緊急引き下げした途端ニューヨーク・アジア・欧州と株価は急反発。

またしても、絶好の買い場を逃してしまったケイコ。けれども、東京市場はまだ高値から9割くらいしか戻していない(8月28日現在)。コマツも3540円だ。サブプライムローン問題は再度火を噴くだろう。今度こそ逃げないようにと決心するケイコだった。

2007.9.5発行 エコノミスト●なごや Vol.31