悲しみを繰り返さないために~ESS説明会~


港区稲永学区で毎月開催される高齢者対象の「ふれあい給食会」に、地域の中日新聞販売店がESSの説明のためにお招きを受けた。これは稲永区域内で起こった不幸な出来事がきっかけになったもの。
 Aさんはお一人暮らし。ある日の朝、新聞受けに昨日の夕刊が取り込んでいないのを配達員が発見した。配達員は販売店に連絡をいれたが、ESSに登録してもらっていないので、連絡先も分らない。外出だとすれば戸を蹴破るわけにもいかない。今日のところは様子を見るしかないと思っていたのだが、その日は幸いヘルパーさんが訪問する日だった。鍵はかけられたままだし、応答もない。おかしいと思ったヘルパーさんは、かねてより聞いていたAさんの娘さんに連絡を入れた。そこで遺体発見となったのだ。テーブルには昨日の朝刊が置かれていた。
そのとき近所の人々の口から出た言葉が「ESSに登録してくれていたら」というものであった。過日NHKでも〝一人暮らしの見守り役〟として放映されたが、まだまだこの制度があることを知らない人が多い。Aさんの娘さんも知らない人の一人だった。
「二度と私のような思いをする人を出さないために、ESSをもっと大々的に宣伝して欲しい」と娘さん。Aさんの場合は早期発見によって命が助かる助からないという段階ではなかったのだが、たとえ遺体になっていたとしても、一分でも早くというのは遺された者の思いだ。「どうか子どものためにも」というご遺族の言葉もあり、地域の民生委員さんの要請でこの度の説明会となったわけだ。「登録してないとプライバシーの問題もあり、新聞店でも手の打ちようがない」と民生委員長はESS加入を高齢者に呼びかけ、参加者は販売店側の説明に、熱心に耳を傾けていた。
説明会が行われたその日の午後からさっそく申し込み電話が相次ぎ、中には会場で手渡された申込書を販売店に持参してみえる人もいた。

2007.5.25発行 み・まも〜る6月号 Vol.1創刊号