ヒュウマンスクランブル


国際七宝美術会員 七宝作家 堀米伸子さん(76)松本市筑摩

「夢と希望を持ち続けて」

職人魂をもった人は、どこかオーラが違うような気がする。それはきっと、努力と結果が結びついたからこそのものだろう。七宝作家の掘米伸子さんも職人魂をもったひとりである。堀米さんは現在、中日文化センターで七宝焼の講師を務め、生徒さんたちに七宝焼の魅力を教えている。
七宝焼は色の付いたガラスの粉末を銅版に溶着させてつくるもの。アクセサリーや器、絵画などが作られる。作品に使われる顔料は色々な色をだすために金や銀、酸化銅などの鉱物が使われるが、昔の人は七宝焼きの色を仏典にある七つの宝石の色にたとえて呼んだことから、七宝焼という呼び名がついたといわれている。
堀米さんが七宝焼と出会ったのは五歳のころ。ひとりでお留守番をしているときに、お母さんのタンスの引き出しにしまってあった着物の帯止めに付いていた七宝焼の飾りに興味を持ったのが始まりだった。「その七宝焼きの美しさは、忘れることができませんでした」と幼い頃の思い出を語ってくれた。
もっと七宝焼のことを知りたいと、大学時代では造形美術科へ所属し、七宝焼を一生懸命学んだ。学べば学ぶほど七宝焼の魅力は大きくなり、もっとたくさんの人に七宝焼を知ってもらいたいと、長野県中のカルチャーセンターで講師を務めるなど大忙しの日々だったという。
そしてその努力が実を結び、一昨年の秋、文化大臣賞を受賞するという輝かしい功績をあげたのである。堀米さんは「今日まで生きてこられて本当に良かったです。希望と夢を持ち続けることが大事ですね」と、今までの人生を振り返る。更に堀米さんは、イジメや自殺などの問題が多い今の若い人たちに向かって、「希望と夢を持ち続けることと、心の交流を大切にしてほしいですね。何事も前向きに生きてほしい」と話してくれた。
作品もすばらしいが、その生き方もすばらしい堀米さん。今では国際七宝美術会員として海外の国際展へ作品を出展している。そんな堀米さんの美しい生き方を真似したいものである。

2007.5.21発行 スパイス 第12号