運動会はボクの世界


保育園の運動会。僕は跳び箱を飛び、ハシゴをくぐり、マットでごろんと回って網をくぐるリレーにでる。白組のアンカーだ。

おじぃちゃんに話したら、「お父さんも早いからきっと早いな」といってくれた。僕のお父さんは消防士。どんなところもすばしっこく入っていく。ロープも上手。すごい勢いで水の出るホースもしっかり持っている。足も速い。僕はいつもお父さんに走り方を教えてもらっている。お母さんは「お父さんに似ているね」って言ってくれる。

一番最初に走るAくんは遅い。僕が何度言っても遅い。足を上げて手を振って、網はこうしてくぐるんだ、と何度も教えたから少しは早くなった。でも、よそ見して走る時は遅い。それでも、練習で赤組には負けたことはないから大丈夫だ。
朝、とっても早く目が覚めてしまった。お母さんに頼んで行くと一番だった。

出番だ。みんなが見ている。
よーい、どん!
あっ、遅れた。遅れた、遅れた。大丈夫だ。なかなか追いつかない。あっ、白組の子がつまずいた。追いつけ!。みんなのお母さんやお父さんの声が聞こえる。

僕の番だ。少し遅れてる。逆転だ。タッチ。いつもより早く走った。跳び箱はうまく飛べた。ハシゴもくぐった。マットも、追いつくぞ。あれ白組の子はいつもより早い。あっ、網をくぐるとき手がすべった。後は走るだけ。負けないぞ。あれー…追いつかない。負けた。えーっ負けた。先生が抱いてくれたけど、涙が止まらない止まらない。

おじいちゃんが、かっこよかったと言ってくれた。お父さんが拍手してくれた。

KID'S 倶楽部 Vol.195 幼年図鑑