VS 住職


ツネさんの檀家になっている寺にある先祖代々の墓は、大分老朽化してきていた。ツネさんの旦那さんが亡くなった時、親戚一同で話し合ってお墓を新しくした頃から住職との戦いが始まった。

割と近所の寺なのでツネさんは昔から住職とも顔見知りだ。法事の度に住職を招き割と仲良くやっていたのだが、自分の旦那さんがお墓に入って寺に足を運ぶ頻度が増えると、色々と不満な事が出てきた。

まず、通路が狭い。というか、まともな通路がほとんどない。
新しくお墓を立てる人の場所は後から土地を増やしてキチンと整備されているのだが、昔からの檀家の墓は寺の本堂の脇にギッチリと集められている。その隙間は20センチもないくらい。

そして本堂の脇には立派な松の巨木が育ち、その根は近くの墓石を持ち上げて傾いてしまっている墓もあった。ツネさんは住職の顔を見るたびに「何か手を打って欲しい」と言い続けていたが、住職はいつもウダウダと言いながらはぐらかしていた。

ある日、ツネさんがお墓に行くと、自分の先祖の墓の前に新しい墓が建っていた。ついに住職はツネさんの先祖の墓の前の通路まで分譲にして売ってしまったのだ。それを知ったツネさんの堪忍袋の緒が切れた。寺中を探し歩いて見つけた住職と、怒鳴りあいの大喧嘩が始まった。

「墓を建てる場所がないと頼まれれば、仕方ないじゃないか」というのが住職の言い分だ。
「通路も無くて、ウチのお墓の前まで辿り着けない。墓参りができないじゃないか!」とツネさんが言うと
「前の墓石をまたいで行けばいい! 足が届かんかったら踏んで行けばいい!」と住職もヒートアップ。
「このバチあたりな強欲坊主! 誰のおかげてアンタの息子が立派に育ったと思ってるんだ!」と、ツネさんは興奮して関係ない事まで言い出す始末。

結局、売ってしまったものは仕方がないのでツネさんが折れるしかなかった。
しかし、これ以上住職に悪さをされないよう、いつも目を光らせていないといけないツネさん。

のんびりとボケてなんかいられない。

2010.02.25 発行 み・まも~る3月号 Vol.34