(有)フェアトレーディング 林口 宏さん


林口 宏さん
第278回
林口 宏さん

ユーザーのため
生産者のため
自分のため

ひょうひょう。あるいはたんたん。そんな風に人生を歩めるのがいい。スローライフはブームではない。おそらく人間が元々持っていた“正統派”の生き方だろう。

原の林口 宏さん(32)は、四年前「フェアトレーディング」を創立。ネットを中心にコーヒー等を販売している。
「あら、やはり起業家?IT関連の」と思われそうだが、ちょっと違う。いや、ずいぶん違う。
テレビに出てくるIT社長たちとは格好が違う。匂いも違う。
「大学を卒業して貿易会社に入社しました。退職して、県のNPOアジア保険研修財団でボランティアをしたり、東京のフェアトレード団体グローバルヴィレッジでのインターンを経て、’99年9月、渡米しました。トランスフェアUSAでの一年間のインターンを通し、フェアトレードコーヒーにかかわるようになったんです」

その後中米に渡り、コーヒーの生産者たちの実情を見て回る。生産者たちの生活は、実に悲惨なものだった。日本では死語に近い「貧困」がそこにはあった。

たぎるような正義感がわき上がったわけではない。それまで、コーヒーも嫌いであまり飲んだことがなかったが、そこのコーヒーはうまかった。

「フェア」とは、もちろん「公正」のことだ。生産者たちの生活が、かくも貧しいのは、正当な賃金が与えられないからだ。 「おいしいコーヒーだ。みんなに勧めたい。そして生産者の人たちにも、正当な賃金を払えばいい。」そんな気持ちで起業した。まさにたんたんと。

気負いもなければ、おごりもない。こんな起業家なら、大歓迎だ。
「ユーザーのため、自分のため、生産者のため」。「自分のため」という言葉が入っているからこそ信用できる。地に足を付け、背伸びもせず、スタスタと歩いていく。
「日本でも普通のスーパーの棚に、フェアトレード商品が並ぶようにしたい」という夢に向かって。

(有)フェアトレーディング http://www.fairbeans.org/

紙ひこうき H.18.4号