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そんな物でやるのなら、 お米研いでもらわなくて結構ですッ!
私の爪はとても丈夫だ。
ネールアーティストの先生に言わせれば、幼児期に良質のたんぱく質をたっぷり食べたからなのだそうだ。
伸ばしても割れず、魔法使いのお婆さんのように湾曲することもない。
あれは大学2年の時だった。通勤・通学電車はいつも満員で、腹の立つことにどの車両にも痴漢がいた。
手が伸びてくると少し体の向きを変えたりしてかわしていたのだが、その日の痴漢はしつこかった。
私は自分の手を痴漢の手に重ねて爪を立てた。そしてゆっくり引いた。
やがて電車は駅に着き、すし詰めから開放された私はわが爪を見て驚いた。皮が付いておるではないか。
まァ痴漢って我慢強いのねェ。とにかく武器になるほど強い爪なのです。
学生時代はこの丈夫で美しい爪が唯一の自慢だったから、
私は根元から2センチ5ミリも伸ばして常に真っ赤なマニキュアをしていた。
それなのにシンデレラ(私ネ?)の母親は私にお米を研げと命令するのだった。
おりしも時は冬。別にマニキュアなんかしてなくても、冬の水仕事は辛い。皿洗いはお湯でできるが、
お米ばかりはそうはいかない。
その上、母は昔人間のご多分に漏れずご飯には並々ならぬ「こだわり」を持っていたから、なおさら厄介だった。
ご飯がまずいと食事の価値が半減するから、おかずよりも気を使わないかんのだと。
「お米は洗うって言いませんものねェ。 研ぐのですからお姫様のようにヤワヤワやってはいけません」だの
「グズグズ研いでいたらヌカ臭くなります」だの
「調子を取りながらザッザ、ほらザッザ」
とまあ小うるさかった。
そしてある日、私は妙案を思いついた。 ステンレスのホイッパー(泡立て機)でやっちゃえ!
1日目は成功でばれずに済んだのだが、2日目に鼻歌交じりでチャンチャカやってるときに母が台所に来てしまった。
冒頭の言葉はその時のものである。
こんなやりとりがあったのにも関わらず、ある夜、明日の米を研ぐ母の手元を見ると、何としゃもじでやっているではないか。
「アタクシ、ちょっと淳子ちゃんのマネしてみました」だってサ。
お母ちゃんも手が冷たかったんだ。
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