読書感想文


K君は小学4年生。今、遅くに帰ってきたお父さんが、晩ごはんを食べている。K君は寝っ転がってテレビゲームをしていた。お父さんの方から、ペラペラと紙をめくる音がするので見てみると、今日学校から返ってきた読書感想文を読んでいた。
いつもは何でもかんでも褒めてくれるお父さんが、珍しく質問してきた。

「K君、この本おもしろかった?」と聞かれたので「うん、普通だよ」と返事をした。「普通かぁ。でも、この感想文には『すごくおもしろかった』って書いてあるよ?」と聞いてきた。「うーん、じゃあ、おもしろかった」と言うと「K君、ゲームをやめてこっちにきなさい」と言いだした。これは怒られる時の雰囲気だ。

しぶしぶゲームをやめて、お父さんの向かいに座る。お父さんの顔は真っ赤になっている。吐く息が酒臭い。酔っぱらっている時に怒ることなんかないのに、どうしたのかな。

「なぁK君、読書感想文って、何で書かなきゃいけないんだと思う?」と言うお父さん。「わかんない。先生が書けっていうから」と答えると、お父さんの口が尖った。さらに「じゃぁ、何でおもしろくなかったのに、おもしろかったって書いてあるの?」と聞いてきたので「おもしろくなかったって書いたら、先生に怒られるから」と答えた。「みんなもおもしろかったって書いてるの?」と言うので「そうだよ」と返事した。「ふーん」とお父さんは難しい顔をして、「みんなと一緒の感想じゃ、おもしろくないじゃん?」と言った。K君は「目立たないように、みんなと一緒がいいよ」と答えた。

「そんなもんかなぁ…」とお父さんはつぶやいた。

KID'S 倶楽部 Vol.195 小学百景