真摯な保育士


園には目指す園児像がある。私の園では「互いに認め合い大切にする仲間」を掲げ、それによって毎月の指針も設けられる。

今月の指針は「生き物を大切にしよう」だ。具体的には「小動物にまで目を向ける」ことから思いやりの心を育て、人間関係の「友だちを大切にしようと、友だちを作ろう」としている。実際に小動物と一緒に過ごすことは難しいから、保育者のさしあたっての目標は「友だちづくり」となりやすい。

先日、保護者から「友だちは自然にできるもので、強制することではない」という趣旨の手紙を、担任の保育士がもらった。その保育士は熱心で、教室で机が一緒になる子(当園では4人づつの机)との交流を基本に、仲間作り・友だち作りを指導している。

「保護者は同席の子どもが気になるのか。意地悪な子がいるのか、気の合わない子がいるのか。何かあるのか」とよく観察し、研修会で使用したテキストも持ち出し「声掛けの方法」など自分の保育も見直した。
しかし、子どもは楽しく過ごしているようで不安がる様子は見られない。

子どもは一様ではない。すぐ打ち解けることもいれば引っ込み思案な子もいる。さらにその保育士どの子にも平等に愛情を注いでいることは承知しているから、保育内容に問題があるとは思えない。
私は手紙について「保護者の指摘は尊重するが、今回は短絡で子どもへの思いを感じない(自分の子どもの事を書いたわけではないだろう)」とその保育士に話し、「心配ないよ」と告げた。

保護者の指摘に悩み保育を振り返るその保育士を、私は一層信頼するようになった。

KID'S 倶楽部 Vol.191 幼年図鑑