みんなに見守られて


その戸建て住宅の一角は住民がほとんど同世代。共に子育てをし、共に年老いた仲間たちだ。そこだけで町内会を作っているわけではないが、一昔前の隣近所という雰囲気があった。

「お互いに年をとったから助け合おう」というのが合い言葉で、住民同士が互いの緊急連絡先を預かってもいた。そんな万全の近所つきあいでも多くの人がESSにも登録していた。

ある朝、Aさんは急に気分が悪くなったので親しいBさんに病院へ連れて行ってもらった。診断は特に異常はないが安静に、というものだった。「じゃあ、休んでね」とBさんは一端帰宅。
お昼になったのでご飯やお買い物の用事でもあればと、Bさんは再びAさん宅のチャイムを鳴らした。応答なし。確かに気分は悪そうだったが、昼前には自分の足で歩いて病院にも行けたのに・・・。異常を感じたBさんは、救急車を呼ぶと共に娘さんの連絡先にも電話を入れた。

救急隊員は娘さんの前でドアチェーンを切断して家の中に入った。しかしAさんは残念ながら事切れていた。亡骸にはまだ温みが残っているようだった。
「父は皆さんに見守られて逝きました」。娘さんはそういって近所の人に頭を下げた。

2009.4.25発行 み・まも~る5月号 Vol.24