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《学問のススメ》
 資本主義のもと、自由競争でやってきた結果、配分に不公平があると気付いた西側諸国はゆっくりと社会民主主義に向きつつあるようだ。マルクス・エンゲルスが唱えた「資本主義が成熟すると社会主義に移行する」という理論は、方向的には間違っていなかったと実感する次第。
 しかし社会主義であるにも拘らず、中国や北朝鮮は人民の皆々が必ずしも幸せでない。分配すべき社会資本が無い内に社会主義体制を敷いたことが第一因と思われるが、それならば小さなパイを分け合って皆で「仲良く貧乏」をしていれば済む事である。
両国社会主義の敗因は「寄らしむべし知らしむべからず」の言葉に象徴される愚民化政策にあるのではないか。高等教育は国家の中枢を担う一部エリートだけのもので、特に地方では無学文盲の大多数が存在する。教育コストは高いうえに、為政者にとっては欠点を指摘される可能性のある嫌なコストだったのだろう。教育制度は国家の出発点でがっつり構築すべきだった。明治政府は初期、国家予算の実に四割を教育に費やした。富国強兵の前提条件として教育が不可欠だからだ。
こうして社会資本を拡充していった日本は、いわゆる「日本型社会主義」を実現。終身雇用・年金制度・累進化税等、マルクスが生きていたら驚くほどの資本の分配ぶりである(最近は何だか皆で寄ってたかって壊しちゃったような気もするが…)。にもかかわらず左翼の人が文句を言うのは、自分たちが実行して実現したものではないからではないか。となればそれはポリシーではなく、利権の問題になっちゃうのだが。
 「天ハ人ノ上ニ人ヲ造ラズ、人ノ下ニ人ヲ造ラズ」と唱えた福沢諭吉は、それを実現するには学問が必要だと説いた。ゆとり教育でゆらりとした我が国であるが、反省は新学習指導要領を前倒ししてまで実施しようとする機運に至った。学問の自由と表現の自由、および表現後の自由まで保障された我が国は、いつだってやり直しがきく。頑張ろうぜ、日本!

2008.5.9発行 エコノミスト●なごや Vol35